筆者はスマホに明るくない方をサポートする活動をしています。
高齢者のサポートをすることも多いのですが、高齢者は普通にサポートするとなかなか理解していただけません。
そこで、高齢者のサポートを長年やって来た筆者がそのノウハウを残しておきたいと思います
優しい言葉を使う
「タップ」ではなく「タッチ」、「スワイプ」ではなく「スライド」さらに一歩踏み込んで「上にスライドして」ではなく「真ん中くらいまで移動させて」など、優しい言葉を使うと伝わりやすいです。
「2回素早く”ちょんちょん”ってやって」「左に”シュッ”てやって」などオノマトペを使うのもありです。
「iCloud」などの英単語は「アイクラウド」と言うのではなく「アイシーエルオーユーディーって書いてるところをタップして…」など綴りを言うと伝わりやすいです。
ただどの言葉が伝わって何が伝わらないかは人それぞれで、正解はありません。トライ&エラーを繰り返して「この人はタップは分かるけど、スワイプは分からないからスライドと言おう」とその人その人の最適解を見つけることをおすすめします。
また「これくらい分かるだろう」という先入観を持たないことも大切です。筆者がサポートした人で「バッテリー」という言葉が伝わらないことがありました。「バッテリーが無くなった」というと「じゃあ買いに行かないといけないのね」と、お米やトイレットペーパーが無くなったのと同じことだと受け取られてしまいました。(「電池」「充電」と言い換えるようにしました。)
電話越しでサポートする時は適宜、画面を確認する
電話越しでサポートする時は相手の画面が見れません。
「〇〇をタップして」と伝えて「タップしたよ」と返答されても、本当にタップできている保証はありません。
タップしたつもりができていない、タップして欲しい箇所の1つ上や下の箇所をタップしてしまっている可能性もあります。
正しく操作できていないまま「じゃあ次は〇〇をタップして」と進めてしまうと「そんなのない」とスムーズにサポートできません。
「今、画面に何が(どんな文字が)表示されている?」と聞くことで、相手がちゃんとタップできているか確認でき、スムーズなサポートに繋がります。
また、OSのバージョンや機種によって設定階層や文字が異なることがあるという意味でも画面確認は有効です
相手の言葉を信じない。
スマホが苦手な方は何か問題が発生した時や困った時、それを適切な言葉や文字にして伝えてくれるとは限りません。
例えば筆者の祖母は以下の表示を「矢印」と表現しました。
「画面に矢印が出てスマホが動かなくなった」と。祖母の「矢印」という言葉に固執してしまったため「バッテリー切れのマーク」を意味しているのだと理解するまで時間がかかってしまいました。
「変な画面が出た」等と言われて「深刻な問題が発生したか、あるいは不具合/バグが発生したか」と考えていたら単に「予期していない(想定外の)画面だっただけ」ということも多いです。
「変な画面だ!助けて!」というので話を聞くと「タップする箇所を間違えていただけ」だったのです。「変な画面」「バグった」「おかしい」「壊れた」「ウイルスに感染したかも」「乗っ取られたかもしれない」など少し怖い相談をされても、スマホに理解がないもの、操作方法を間違ったもの、勘違いによるものの可能性が極めて高いので信じて慌てないようにしましょう。
電話越しでサポートする時は特に疑いましょう。
LINE開いたと言いながら、メッセージアプリを開いていた(LINEとメッセージアプリの区別が付いていない)ということがありました。
エラーメッセージ(エラー番号)の内容を聞く・状況を聞く
問題が発生した時に、エラーメッセージやエラー番号が表示されることは少なくありません。
エラーメッセージやエラー番号を聞くこと(アプリを使っていて表示された場合はそのアプリ名も)聞くことでスムーズな解決ができることは多いので
ただ、エラーメッセージをしっかりと(細かいニュアンスが重要になるので「こんな感じのメッセージが表示された」では不十分)伝えてくれることはあまり期待できません。
そこで、おすすめなのが状況を聞くことです。
「メッセージが表示されたけどこれ何?」だと分かりませんが、そのメッセージが出た状況を聞いて答えが「動画撮影してたら何かメッセージが表示された」であれば、容量不足や熱暴走などを疑うことができます。
一度にたくさん教えない
問題によっては、複数の原因・解決策がある場合があります。
例えばアプリの通知が来なくなった場合、「端末を再起動する」「通知設定を一度OFFにして再度ONにする(端末の設定、アプリの設定両方)」「アプリをアップデートする・アプリをインストールしなおす」といった対処法が考えられますが、「まず端末再起動して、それでも直らなかったらアプリの…」と長々と言ってしまうと、「難しい」印象を与えてしまったり、どれかを仕損なう可能性もあります。
1つずつ、簡単なものあるいは解決する可能性の高いものから順番に教えるとスムーズに解決できます。
聞かれていないことを教えない
あれこれ教えても高齢者は覚えきれません。それどころか、せっかく覚えた操作を忘れてしまうリスクがあります。
よほど便利な機能でない限りは、聞かれない限りは教えないことをおすすめします。スマホを使う上で特に困っていないのに色々教えるのはお互い無駄でしかありません。
概念を教える
高齢者はスマホやアプリの操作方法を「丸暗記」で覚えようとする節があります。
我々は、例えば何か設定を変える時はだいたい歯車マークか三本線(ハンバーガーメニュー)を探してタップすればいいといった感じで概念でアプリの操作方法を覚えるため、初めて使うアプリであっても何となく操作できます。
しかし、高齢者は「まず右上をタップして、次に画面中央付近までスライドして、〇〇ってところをオンにする」と言った感じで手順を丸暗記で覚えようとするため、アプリごとに操作方法を教えなければならないことがあります。これでは教える方が大変です。
そこで、「〇〇したい時はだいたい、こういうアイコン(概念)を探してタップしてみて」と教えましょう。
メッセージを送信したい時や投稿したい時は+ボタンや矢印マーク、画像はカメラのマークか四角いマークを押せばいいといった感じです。
同じマークやボタンが複数の機能を持つことや、同じ操作でもその時々によって結果が異なる時があることがあることも教えましょう。
高齢者は「1ボタン1機能」という固定概念が強く「この操作したらAになるんじゃないの?したいのはBなんだけど」と理解が遅れてしまいます。